エチュード分析オタクが紹介♪「歌う」フルートエチュード3選
エチュードってどんなイメージですか?
「難しそう」「敷居が高い」「技術を機械的に反復する練習曲」…
そんなマイナスな声しか巷から聞こえてきませんし😭
エチュード=機械的な練習曲
というイメージが強いのではないのでしょうか?
しかぁぁし!
エチュードの世界は果てしなく広く、奥が深い!
あの先生(作曲家)が書いた「歌う」っぽいタイトルがついたエチュードもあるんです。
超メジャー級のエチュード(いわゆる代表作)からは少し外れるかもしれませんが、
マイナーにはマイナーの、いわゆる「B面」には「B面」だからこその面白さがあるのです。
今回はそんな意外な?魅力に溢れた「歌うエチュード」をご紹介。
いつも通り...いや、いつもより「エチュード愛」炸裂の個人的な見解ですが、何卒ご了承くださいませ。
ケーラー:
25のロマンティックエチュード Op.66
初級~中級
優等生の意外な一面にギャップ萌え!?
「ロマンティック」なんてタイトルが付いてるからさぞかし甘くて情熱的な、うっとりするようなメロディーが並んでいるんだろうな…って、ウキウキしながら吹いてみたんです。
しかし、なんだか様子がおかしい…
譜面が黒い(音符が多い)
25のエチュード全てについてる「タイトル」からもロマンティックな匂いがしない
思ってたのと違う笑
その「タイトル」にも突っ込みどころが多いし
「ぶらんこ」
「風」
このへんはタイトルと曲が合ってて、情景が浮かぶ
「指の練習」
「ダブルタンギング」
いや、そのままやんっ!捻りないんかいっ!
「なぐさめ」
「さようなら」
タイトルと曲の感じが合ってない
んん?何なのこれは…?
統一感のない25のタイトルを集めた「ロマンティック」にほど遠い「ロマンティックエチュード」
何なん…謎…
でもある日、ピキーンって閃いちゃったんです💡
これ、ケーラーの思い出なんじゃない…?
楽しかった「ぶらんこ」、辛かった「指の練習」、時には誰かを「なぐさめ」、切ない「さようなら」の記憶...
これはケーラーの極めて個人的な「ロマンティック」な思い出を集めたエチュード集。
だから、「ロマンティックエチュード」
だから、タイトルに統一感がない。
なるほど、なるほど。
おまけにこれ、初恋の幼馴染みとの思い出でしょ、絶対。
注:ここから私の勝手な妄想が暴走します(閲覧注意?笑)
幼少期の「ぶらんこ(#1)」の思い出に始まり、
「からかい(#3)」(←好きな子いじめる男子やん)
「なぐさめ(#4)」ながら、共に過ごし
「手に手をとって(#12)」ついに結ばれ
「さよなら(#13)」悲しい別れ。
お互い別々の道を歩んでいたけど、数年後、再開。
「海辺(#21)」で語り合い
「スペイン風カプリス(#23)」「ロシヤの踊り(#25)」世界を一緒に旅する。
これほど「ロマンティック」なエチュード集、他にある?
吹きながら想像してニヤニヤしちゃうもん(それは、私だけ笑)
代表作Op33の非常にバランスのいい優等生的な「THE エチュード」 に比べると、タイトルがついた表現音楽ということもあって、少し自由な印象ですが、ケーラーならではの曲の作りは顕在。相変わらず転調や和音進行は美しく見事です。
優等生ケーラーのロマンティックな思い出に浸れるエチュードです。
ガリボルディ:
20の旋律的練習曲 Op.88
初級~中級
6/8拍子の魔術師 、大人のバラード
元々、代表作「ミニヨン・エチュード」から機械的要素少なめで、メロディックで曲っぽいのが特徴なのに、敢えて「旋律的」と自分で言っちゃってるエチュード集。
それ、もはや普通の曲ちゃうのん?
とか思ったり笑
こうなると、エチュードと普通の曲の違いって何ぞや?ってなってきますが
(まぁエチュードも練習曲だから曲であることは確かだけど)
ケーラーと違って(失礼!)、
タイトルに偽りなし、期待通りの演奏感
テンポがゆっくりめの曲が多く、「歌いやすい」し、
テンポ速めで細かい音符のエチュードも箸休め的なブリッジが入り、心理的に救われる。
この辺が奏者を気遣うガリボルディの優しさよねぇ(って勝手に思ってる)
何より6/8、9/8拍子の短調は絶品。
胸がぎゅってなる切ないメロディー、
演奏する方も聴いてる方も気持ちいい音運びは、「かゆいところに手が届く」心地良さ。
どうやら6/8、9/8拍子がガリボルディの十八番っぽい。
その拍子の曲が多いし、「どうだ!こんな曲も書けるんだぞ!」という熱を感じます。
タイトル通り可愛らしい曲が並ぶ「ミニヨン・エチュード」とは違って
叙情的なメロディーが並ぶ、酸いも甘いも噛み分けた大人のバラード集って感じ。
指が吊りそうになる、らしからぬストイックさ(!)を覗かせた曲もあったり
ガリボルディの特徴である細かいダイナミクス指示が、ほぼなかったり
また違った魅力を発揮した、1歩先の大人のエチュード集です。
ベーム:
24のメロディックな練習曲 Op.37
中級~上級
偉大な革命家の概念を覆した人間臭い暴走
まずね、譜面が黒いんです。音符が細かいんです。テンポが速いんです。
ゆっくりめのテンポで歌う?なんじゃ、そりゃ?とばかりに
アレグロの連符の曲が並びます。
メ、メロディック要素はどこですか....?
代表作24のカプリスOp.26との違いはどこですか...?
なんならカプリス(奇想曲)の方が「メロディック」ですが...?
そして...このエチュード、4つの組曲なんです(そのように表記してある)
テンポが速い、似たような、曲が並ぶのにですか?
エチュードなのに?エチュードを?エチュードの?組曲...??
これは、あれだな。
フルートの新しい構造を確立して、カプリスOp.26 も成功したから、気をよくしちゃったんだな...きっと。
”オレはフルート界の革命家ベーム
ベーム式フルートを作った男
性能を熟知したエチュード「カプリス」
オレにしか書けないエチュード「カプリス」
ピアノとのデュオ曲だって6曲あるぜ
だけど、まだまだこんなもんじゃねぇ
誰もやったことないことやるのがオレ
概念なんてくそくらえ
覆してやるぜ、この手で Yo
野心溢れる、オレは革命家ベーム
Yo Yo”
ってな感じ(笑)のイケイケ状態で、エチュードを「組曲」として構成する前代未聞の壮大な試みに打って出たんだろうねぇ。
誤解のないように断っておきますが、私はベーム推しですし、ベームのエチュードはベストくらい好きです。
その上で、敢えていいますが...
実験的な試みは成功した、とは言い難く「蛇足」に思えてしまう。
この漫画好きだけど、終わるの悲しいけど、ここで終わってくれてれば、良かったのに...と思うことありますよね。
まさにそんな感じなのです。
でも「蛇足」ではあっても「駄作」ではありません。
同じ音形が並ぶ機械的で技巧的なエチュードは流れが美しく、
ともすれば、日課練習っぽく退屈になりそうなのに、そうはならない仕掛けがしてあって、さすがとしか言いようがない。
音の跳び方がエグいし、同じ音の並びでもアーティキュレーションが細かく変わるので、「初見殺し」であることも確かですが(笑)
スムーズに吹けるようになると、メロディーラインが浮かび上がる。
あぁ、だから「メロディック」エチュードなのか
一見すると分かりにくい音符軍の中にメロディーラインが隠されている。
これは、抒情的で分かりやすいだけが「メロディック」じゃない、という
ベームの皮肉めいた挑戦状なんだと思います。
偉大な革命家で精密機械みたいに完璧なベームの、野心がちょっと変な方向にいってしまった(笑)、
そんな人間臭い痕跡を感じられるエチュードです。
三者三様の「歌う」から見えたこと
今回は「ロマンティック」「旋律的」「メロディック」と「歌う」っぽい名前のついたエチュードを3つご紹介しました。
甘酸っぱい青春の「思い出」を、物語るケーラー。
一歩先の「大人の叙情」を、感じさせるガリボルディ。
革命家の「人間臭い暴走」の果てに、実験的な試みを示したベーム。
3人とも「歌う」っぽいタイトルを掲げているのに、その表現方法は、イメージするような、ただ分かりやすく美しい「歌」だけではありませんでした。
多くの人にとって、エチュードはただの練習曲でただの課題で、それほど興味のないもの、なのかもしれません。
でも、エチュード1曲1曲にも作った人の想いがそれぞれ込められている
と、私は思います。
「技術の習得を目的としている」という大前提の中でも、意図や表現方法もバラエティに富んでいますし、作曲者の個性もより濃く反映されているんです。
同じ「歌う」っぽいタイトルつけたエチュードでも
こんだけアプローチや表現方法が違うのだから
やっぱりエチュードはおもしろい!
追伸:ただ「面白い」で終わらせないために
「なるほど、エチュードって面白そう!やってみようかな...」
って思いました?(思ってくれたらめっちゃ嬉しい😆)
…でも、ちょっと待ってください!
ポイントを押さえずに取り組んでしまうと、
・ただ通すだけの練習になり、思ったより力がつかない
・1番から順番にこなすだけの作業になり、曲に応用できない
・結果、譜読みに時間がかかりすぎて、練習効率が上がらない…
なんて、せっかくの面白いエチュードも面白くない結果に繋がりかねないんです。
そして、「なんだ、思ったより力もつかないし、譜読みも大変だし、面白くないじゃん」
と棚に放置される未来が見えちゃうぅ...😭
せっかく興味をもってくれたのなら、エチュードを自分専用のお悩み解決「万能ツール」として活用しませんか?
一度学べば、今回紹介した少々クセが強いエチュード(笑)も自分に合った活用ができるようになり、練習や譜読みの仕方そのものが変わるはずです。
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